M&A仲介会社を2社経験しており、現在進行形で働いている筆者から見たM&A仲介会社で働くうえで良い面と覚悟しておくべきことをまとめました。
M&A仲介会社は、20代~30代中盤までの方にとって転職するうえでの新たな選択肢になり得ると考えています。
年収ランキングで上場しているM&A仲介会社が常に上位にいるなど華々しい側面がある一方で、離職率の高さに裏打ちされている激務な環境があるなど万人に働きやすい環境が用意されているものではない側面もあります。
複数社のM&A仲介会社で働いたことのある筆者の経験から、M&A仲介会社で働くメリットとデメリットをまとめました。
M&A仲介会社で働くメリット
顧客から泣きながら感謝される仕事ができる
良縁のお手伝いができた時、売り手からも買い手からも「本当にありがとう」と感謝されます。
売り手は一国一城の主として、これまで何十人、何百人と従業員を支えてきた方なので当然ビジネスセンスがあります。また、会社のピンチを何度も救ってきたスーパーマンです。
M&Aの仲介者はこうした売り手オーナーと対峙して、時には寄り添い、時には叱咤し、時には議論を戦わせます。
こうしたをやり取りを経て仲介者との信頼関係が構築されていきます。
そして、成約に至った時にはその感動も大きく、私としても胸にこみあげてくるものがあります。
また、買い手企業にとっても時には数十億円規模の買収となるので、企業の買い物の中でもトップクラスに大きいものです。
そのため、外部の専門家を使って喧々諤々の議論をしたうえで買収するべきか判断しますので、買い手が納得できたものでないと買収には至りません。
自身が本当に良いと納得して買収することになるので、やはり最後には感謝の言葉を口にしていただけることが多いです。
このように、売り手と買い手双方から深く感謝される仕事なのでやりがいは大きいと感じています。
伸びている業界で働くことで労働市場価値が上がる
日本の少子高齢化を背景に、社長の高齢化は進んでいることは周知のとおりです。
社長が高齢になると出てくるのが後継者問題ですが、そもそも子どもがいない、子どもがいても別のことをしたいといった理由から後継者が見つからない企業は増加しています。
上場大手3社の決算説明資料には、同様の内容が記載されています。
こうした外部環境から、M&A件数は右肩上がりで増え続けていますし、どんどん新しいM&A仲介会社ができています。
このように、業界全体が伸びているので各社採用意欲は旺盛です。
転職活動をしている時に、とあるキャリアコンサルタントに、
コンサルタント
M&A仲介のコンサルタントは一番多い日本M&Aセンターでも500~600人程度。日本全体で見ると多く見積もっても数千人くらい。一方で、大手コンサルファームは1社だけで1万人を超えているところもある。需要と供給のバランスから考えて、M&A仲介コンサルタントの方がニーズは高くなりますよ
と言われました。前提が違うものを比べている気もしましたが、言いたいことはその通りだなと考えています。
頑張って成果を出せば年収が大幅に上昇する
言わずもがなですね。ただ、お金ばかり追い求める人は成果が持続していないように思います。
年収1億円に至った人を何人か知っていますが、翌年には成果は全く出ていませんでした。
後述するように、結構なハードワークなので一度稼いでしまうとバーンアウト症候群のようになり、充電期間が必要になってしまうという気持ちもよく分かります。
M&A仲介会社で働くうえで覚悟しておくべきこと
一言で言うと、精神的にも肉体的にも負担が大きいです。
実際にM&A仲介会社の中で働いている人間として、実体験も交えてお話しします。
顧客から「何とかならないの?」というプレッシャーを受け、「どうしよう・・」と悶々とする
案件が進んでくるとほぼ毎日こういった類の質問を自分の顧客から受けることになります。
事前にどれだけ論点を潰しこめるかで負担感が変わりますが、経験が浅いうちは事前の論点潰しこみができません。
経験の浅いうちは毎日、鋭い質問をサンドバックのように浴びせられて、一つ一つ対応していくことになるのでかなり疲弊します。
また、経験を積んだとしてもM&Aは一点もの(全く同じM&Aはこの世に存在しない)ということもあり、こういったプレッシャーが0になることはありません。
案件の成約可否によって得られる報酬に差があるため、案件が破談(ブレイク)になった時の落胆度合いが大きい
案件によっては成約させるか否かで1,000万円単位で収入が変わります。
インセンティブが入ったら何を買うか同僚と話すというのは、M&A仲介会社あるあるだと思いますが、M&Aは自分ではどうしようもない理由でブレイクすることが珍しくありません。
インセンティブが入ったら何をしようと一緒に話していた人が成約したのに、自分はブレイクしたという現実を突きつけられると普通に心が折れます。
移動がしんどい
飛行機、新幹線、車などあらゆる移動手段を駆使して全国の中小企業のオーナーと面談します。
当然出張が続けばホテル暮らしになります。朝起きた時にテレビを点けてやっている天気予報を見て自分がどこにいるか思い出すような生活をすることもあります。
個人的には、地方出張は好きなのでこういう体験はむしろ楽しめる方です。とはいえやはり長距離移動が続くと体がバキバキになります。
拘束時間が長い
会社に帰ってこれた時は、早く帰って家族の顔を見たいところですがやることはたくさんあります。
出張先で受領した各社の資料整理、次の提案まとめ、経費精算(移動が多く地味に負担)、新規営業のためのDM作成と発送 などなど
日中は顧客と接点を持って、事務作業は夕方にやる。このサイクルを徹底している人が多いように思います。
特に、新規営業を止めると手元に案件がなくなってしまうのでどんなに忙しくても新規営業は欠かせません。
うまく時間を調整していかないと、毎日日付が変わってからの帰宅ということになりかねません。
少なくとも、案件が成約間近になると22時より前に帰ることはほとんど無いです。
自分の子どもから、「おじさん、また遊びに来てね」と言われる人もいるとかいないとか。。
成果が出るまで時間がかかる
最初の接点から1年未満で成約までいたる案件もありますが、普通は成約まで1年以上は平気でかかります。
新入社員は特に0からのスタートなので、1年未満で成約できる案件が取れない場合は初年度成約0件ということも普通にあります。
同期入社した人が成約してインセンティブを獲得しているのを横目に見ながら、「くそぅ、俺だって・・」と気持ちを奮い立たせて仕事に取り組んでいかなければいけません。
個人的には、ここでモチベーションが維持できずに会社を去ってしまう人が一番多い気がしています。
会社から与えられているノルマを達成しなかった場合、社内で存在価値が認められない
これは会社によりますが、売上至上主義の会社では、ノルマを達成できない見込みとなったら「あいつはチームにお荷物」、「うちのチームには不要な人材」といった会話が普通にされます。
これまで解説してきたプレッシャーを受けながらこうした社内からのプレッシャーにも打ち勝っていかなければいけません。チームからリリースされて他に拾ってくれるチームが無く、泣く泣く会社を去っていく人も珍しくない光景です。
まとめ
自分の経験を基に、生々しく書いてきたつもりですがいかがでしょうか。
社会的な意義があり、顧客から感謝されて、成果が収入に直結する。
こうした素晴らしい仕事である反面、先述したプレッシャーに打ち勝っていかなければいけないということで、報酬に見合うだけのしんどさがある仕事だと改めて感じました。
メリットとデメリットを比較して、それでもチャレンジしたいという方はぜひチャレンジしてみてください。
M&A仲介会社は新興勢力がたくさん出てきており、各社採用意欲は旺盛と聞いています。
転職活動の進め方については下記にまとめています。